不動産の鑑定評価

 不動産鑑定評価基準は、不動産の鑑定評価の専門家である不動産鑑定士等に対し、不動産の鑑定評価を行なうにあたってその拠り所となる合理的であって、かっ実行可能な基準を設定し、提供することを目的とするものであり、不動産鑑定士等がどのような考え方のもとに、どのような方法に従って不動産の鑑定評価を行なうべきであるかということを明確に規定しているものです。
 この不動産鑑定評価基準の冒頭に置かれているものが不動産の鑑定評価に関する基本的考察ですが、その内容は、不動産の鑑定評価とはどのようなことであるか、それは何故に必要であるか、われわれの社会においてそれはどのような役割を果たすものであるか、そしてこの役割の具体的な担当者である不動産鑑定士等に対して要請されるものは何であるかを明らかにし、不動産鑑定士等をしてこれらの事項を十分に理解させ、体得させようとするものです。

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 これらの内容は、大別すると、まず不動産とその価格、および、それらが有する特徴についての理論的考察であり、つぎに、不動産の価格について鑑定評価を行なうことの必要性とその意味および不動産の鑑定評価の社会的公共的意義の究明、さらに不動産の鑑定評価の具体的な担当者である不動産鑑定士等に対して要請される倫理的事項を明らかにする等のいわば不動産鑑定士等の心がまえに関する訓示的な規定であるといってよいでしょう。このうち、理論的考察に関する部分は、直接、鑑定評価の実務なり、技術的手法なりに関わるものではないけれども、この基準全般を通ずる理論的基礎としての位置を占める部分なのであって、これらの点に関する十分な理解なくしては、この基準全体の的確な解釈はありえず、したがって適正な鑑定評価を期待することは望み得ない性質のものです。つぎに、不動産鑑定士等の心がまえに関する部分は、不動産鑑定士等が鑑定評価を行なう場合に、単なる技術的処理における完璧さに満足することなく、不動産の鑑定評価の社会的公共的意義にかんがみ、その鑑定評価活動に課せられた社会的責務を常に自覚して行動することを要請したものです。
 不動産鑑定士および不動産鑑定士補に対し、不動産の鑑定評価に関する唯一の専門家として業務独占の地位を与えた不動産の鑑定評価に関する法律は、鑑定評価について高度の知識と技能を有する不動産鑑定士等による鑑定評価活動を通じて、土地等の適正な価格の形成が図られることをもってその究極の目的としているが、このような目的の達成のためには、不動産鑑定士等が行なう鑑定評価が客観的に公正妥当で信頼性の高いものとしてこの社会によって受け容れられ、それがあらゆる機会において利用されるようになることが必要であると考えられる。そのためには不動産鑑定士等自身が常にこのような鑑定評価の意義を念頭において鑑定評価を行なうとともに、その技術の向上に努め、公正で的確な鑑定評価を行ない得るよう心がけることが、何よりもまず必要です。
 また、不動産の鑑定評価の作業はこの社会における一連の価格秩序のなかに占める不動産の価格のあり所を指摘することであるとされていますが、不動産の価格は重要な選択指標の一つとしてこの社会における不動産のあり方を規定し、そこで規定された不動産のあり方のいかんが、われわれの生活の基盤としてその幸福を左右するものであるという意味において、鑑定評価という仕事の社会的公共的意義にはまことに大きなものがあるといわなければならない。したがって、このような重要な社会的使命を負わされている不動産鑑定士等に対して要請される倫理的な責務を自覚し、それに従って行動することは、不動産鑑定士等に課せられた根元的な義務であるということができるのです。
 これらのことを通じて、基本的考察において述べられていることは、そのすべてが不動産の鑑定評価の本質的な理念に関する事項であって、不動産鑑定士等は鑑定評価の理論および実務の習得に先立って、その前提としてこれらの事項を十分に理解するのみならず、これをすべての鑑定評価の基礎として活用するために、深く体得することが必要とされているのです。

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