不動産とその価格

 不動産は、通常、土地とその定着物をいいます。この規定は、不動産を物的にとらえていますが、鑑定評価の対象として把握する場合は、不動産と人間の関係の立場から考える必要があります。
 不動産のうち最も基本的なものは土地ですが、土地と人間の関係は、われわれ人間が土地をどのように利用しているかということを意味します。この関係は、不動産のあり方に具体的にあらわれます。不動産のあり方とは、不動産がどのように構成され、どのように人間に対して貢献しているかということです。個人の幸福も社会の成長、発展および福祉も、この不動産のあり方がどのようであるかということに依存しているといえます。
 不動産のあり方は、社会的、経済的および行政的な諸力の相互作用により決定されます。そしてこの決定は、不動産の価格のいかんを選択の主要な指標として行なわれます。不動産の価格のいかんとは、社会における一連の価格秩序のなかで、その価格がどのようなところに位置するかということであり、したがって、不動産の価格は、不動産のあり方を大きく左右するものであるといえます。不動産の価格は、一般に、その不動産に対してわれわれが認める効用、その不動産の相対的稀少性、その不動産に対する有効需要の存在の三者の相関結合によって生ずるその不動産の経済価値を貨幣額をもって表示したものです。この三者の内容については、いろいろな解釈がなされていますが、一般的には、次のように理解されています。
 一般商品の価格は、需要と供給の均衡点に定まりますが、不動産の価格においても、その価格は、その不動産に対しての購買力を伴った需要と、不動産特有の供給との間に定まるものであり、この両者の根底に効用があるとするものです。この効用、相対的稀少性、有効需要は、基本的には、社会的、経済的および行政的な諸力の相互作用によって動かされます。
 このように、不動産のあり方、不動産の価格および諸力(社会的・経済的・行政的)の三つは、それぞれ密接に関連し、影響し合っています。また、不動産価格は、選択指標としてこれらの諸力に影響を与えると同時に、自らはこれらの影響のもとにあるという二重性格をもっていることがわかります。

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 不動産のあり方は、土地と人間との関係を体現するものですが、土地は、他の一般の財と異なって、次のような特性を特っています。
 自然的特性 - 不動産鑑定評価基準は土地の自然的特性の内容を次のように示しています。「自然的特性として、地理的位置の固定性、不動性(非移動性)、永続性(不変性)、不増性、個別性(非同質性・非代替性)などを具有し、固定的であって硬直的である。」このように土地は他の財と異なり、位置が固定し、永続的で不増的なものであり、一つ一つが個別性を有する自然的特性を有し、それは固定的および硬直的な性質といえるものです。
 人文的特性 - 基準は、土地の人文的特性を次のように説明しています。「人文的特性として、用途の多様性、併合および分割の可能性、社会的および経済的位置の可変性などを具有し、可変的であって伸縮的である。」この人文的特性は、土地に人間が関与した場合に認められる特性であり、たとえば、土地の上の居宅を店舗に改造して使用することに示されるような用途の多様性を有し、売却における土地の分筆、合筆などにあらわれる併合や分割などの可能性もあり、また、駅の新設により従来の住宅地が商業地に変容することなどに示されるように、その特性は、可変的であって伸縮的です。
 大都市近郊で宅地造成が盛んに行なわれていますが、その造成による宅地は、おおむね平地部か、それに連なる丘陵地帯に位置し、急峻な山岳にはまったくみられません。このように、自然的条件が基礎となり、次に人文的条件が加わって不動産は構成されます。
 つまり、不動産は、前記の土地の特つ諸特性に照応する特定の自然的条件および人文的条件の結合として構成され、その社会的および経済的位置を占めるものです。また、この構成や位流は固定的なものでなく、従来の住宅地の近くに鉄道の駅が新設されて、木造の居宅が鉄筋コンクリート造りの中高層の店舗に変貌することにみられるように、諸条件の変化に伴って、その構成ならびに社会的および経済的位置は変化します。
 不動産は、その自然的条件および人文的条件の全部または一部を共通することによって、他の不動産とともにある地域を構成し、これに属するのが通常です。いわゆる高級住宅を例にとりますと、それは単独に存在するものでなく、高台にあって、圃地面積も大きく、居住者の所得水準は上位にあり、環境も良いといった同質的なもので構成されているのが一般的です。このように、不動産はその属する地域の構成分子として、その地域およびその地域内の他の不動産との間に、依存、補完、協力、代替、競争、などの相互関係にたち、この相互関係を通じてその社会的および経済的位置を占めるものです。これが不動産の地域性といわれるものです。
 個々の不動産の属する地域には、その規模、構成の内容、機能などに従っていろいろな種類のものがありますが、そのいずれも不動産の集合という意味において、特定の自然的条件および人文的条件の結合として理解されます。地域は、但の地域と区別される特性をそれぞれ特つとともに、他の地域との間に相互関係に立ち、その関係を通じて、その社会的および経済的地位を占めます。これが地域の特性といわれるものです。
 このような不動産のあり方がもつ特徴のために、不動産の価格についても、他の一般の諸財のそれと異なって、次のような特徴を指摘できます。
 不動産の価格は、一般に交換の対価である価格として表示されるとともに、その用益の対価である賃料として表示されます。そして、この価格と賃料との間には、いわゆる元本と果実との間に認められる相関関係を認めることができます。
 不動産の価格は、物的なものの価格というよりも、不動産に関する所有権その他の権利利益の価格です。更地が第三者に賃借され建物の敷地となったとき、同一の宅地に借地権価格と底地価格が成立する例にみられるごとく、二つ以上の権利利益が同一の不動産の上に存在する場合には、それぞれの権利利益について、その価格が形成されます。
 不動産の価格は、過去と将来にわたる長期的な考慮のもとに形成されます。不動産の属する地域は固定的なものでなく、その社会的および経済的位置は、常に拡大、縮小、発展などの変化の過程にありますから、不動産のあり方が現在最適のものであるか、また将来はどのようなものであるかということは常に吟味されなければならないからです。
 不動産は、その適正な価格の基礎となる市場価値を形成する場を持っていません。不動産の現実の価格は、取り引きなどの必要に応じて個別的に形成されるのが普通であり、その価格は個別的な事情に左右されることが多いものです。また、不動産の取引市場は、存在しないに近い状況か、存在してもきわめて局地的で不完全なものです。
 このように、不動産には、適正な市場価値を形成する市場がないために、その適正な価格を求めるには、鑑定評価活動に依存せざるをえません。
 不動産の鑑定評価は、その対象である不動産の経済価値を判定し、これを貨幣額で表示することです。それは、合理的な市場があったならば当然そこで形成されるであろう正常な市場価値を表示する価格を、鑑定評価の主体が的確に把握する作業といえます。

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