更地の管理

 更地とは、その土地の上に建物その他の定着物がなく、かつ他人により使用収益が制約される権利のついていない、たとえば賃借権とか地上権とか地役権とかいったいわゆる用益権がついていない土地のことです。ただし都市計画法とか建築基準法とかの公法上の制限は受けます。建物やその他の定着物がない点で空地と似ています。しかし、他人に貸した土地となると、他人がまだその土地の上に建物などを建てていない状態のままだと空地ではありますが、それはもはや更地とはいえないことになります。また更地は、自分の所有地のことをさします。他人から借りた土地は、いまだ建物などを建てていない空地のままのものであっても更地ではなく、いわゆる借地です。
 以上のように更地は、厳格にいうと空地とは違い、また借地とも違いますが、ここでは広く所有地でも借地でも、それに建物等を建てたりその他の施設をまだしていない空地という意味で使い、以下その管理上の留意点を述べてみましょう。たとえば、土地は買ったが建築資金などの都合で、建物は当分の間建てられないのでそのままにしておく場合とか、投資目的で買っで当分ねかせておく場合だとか、不動産会社などが宅地見込地を購入したが、開発造成にはちょっと時期尚早であるとかいうことで、土地を空地の宜までおく場合の管理上の留意点についてです。

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 土地盗人とは、戦後間もない混乱時代に頻発したケースであり、他人の土地を不法占拠したり、境界をおかして不法侵蝕したりする例です。最近においても、いわゆる地面師という知能犯によって、自分の土地がいつの間にか第三者に売りとばされていたといった例が、ときどき新聞紙上をにぎわすことがあります。
 戦争直後の不法占拠の場合は、その占有権の回復には実力行使ができず、訴訟に手間どり、とどのつまり、替地を提供させられたり、長期割賦で売却を余談なくされたり、立退料を絞りとられたりといった結果になった例さえあります。またやむを得ず行なった占有回復のための自力による実力行為が建造物損壊、器物損壊罪を構成したり、暴行傷害、業務妨害などの犯罪を構成する結果になりかねないことがあり、不法行為まかり通るといった感じさえありました。
 従来、不動産は、動産のように持ち去ることができないし、侵害に対する権利の回復が比較的容易であるという考え方で、窃盗罪の対象とはならないものとする説が有力でしたが、上述のような不法行為がまかり通る事件が頻発するようでは、こと重大であるということで、昭和三十五年、次のような刑法の改正と不動産登記法の改正が行なわれたのです。
 改正刑法で新たに設けられた二三五条ノニでは、「他人ノ不動産ヲ侵奪シタル者ハ十年以下ノ懲役二処ス」とあります。他人の不動産とは、広く他人の占有する不動産という意味に解釈され、その占有とは事実上の支配をすることとされています。したがって自分の所有地であっても、他人に賃貸している場合や差押えを受けている場合も、ここでは他人の占有する不動産ということになります。
 またその占有が必ずしも民法上の正当な権利に基づいていなければならないとはかぎりません。たとえば賃貸借契約が、債務不履行などの理由で解除されたにもかかわらず、その土地を明け渡さないでいるような場合で、このような場合、所有者がいきなり法の力をかりず自力で取り戻すような行為は、遂に所有者の方がこの侵奪罪に問われるという結果にもなるのです。
 侵奪とは不法領得の意思を持って不動産に対する他人の占有を排除し、これを自分の支配下に移すことと解釈されています。他人の占有を排除するという積極的な作為によって自己の占有が開始されることが、この罪の成立要件とされるのです。たとえば不法領得の意志をもって、他人所有の土地の上に建物を建てたりすることはもちろん、他人所有の空家に無断で住み込んでしまえば、それは家屋の侵奪ばかりでなく、同時に敷地の侵奪にもなると解釈されています。
 また自分の支配下に移すということは、必ずしも自分自身が所持する場合とは限らず、第三者に所持させることとしても占有を取得したことになる場合があり得るとされています。たとえば他人の土地を自分の土地であると偽って貸し付け、その第三者に住宅を建てさせたような場合は、侵奪行為となるものと解釈されるのです。
 改正刑法二六二条ノニでは「境界標ヲ損壊、移動若クハ除去シ又ハ其他ノ方法ヲ以テ土地ノ境界ヲ認識スルコト能ハサルニ至ラシメタル者八五年以下ノ懲役又ハ千円以下ノ罰金二処ス」と規定されました。この規定が新設される前にも、このような行為は器物損壊罪を構成することになりますが、この規定の新設によって刑が重くなったわけです。
 なお、境界毀損をするのは、多くは前項の不動産侵奪のためです。たとえば境界標を動かして他人の土地を自分の方へ取り込んだりする場合ですが、このような場合は、侵奪罪と毀損罪の二つの犯罪が観念的競合の関係で成立することになります。しかし、境界を一時移動させて自分の土地のように見せかけ、詐欺をしようなどという場合なら、不法頒得の意志をもって自分の支配下におくものとはいえないので、不動産の侵奪とはならず、境界毀損罪しか成立しないことになるとされています。
 他人の土地の権利害や保証書を偽造したり、詐取したり、また所有者の印鑑証明書などを偽造したりした上で、これらの偽造書類等を行使して、土地所有者になりすまし、第三者をだまして、その土地を売りつけ、代金を詐取するというのが、俗に地面師と呼ばれているものです。これらは、公正証書原本不実記載の罪や、私文書偽造および行使の罪、または詐欺罪に問われることがあっても、前述した不動産侵奪罪には該当しないと解釈されています。
 しかしとにかく、この地面師も土地盗人の最たるものであり、これを少しでも防ごうということで、刑法の改正とともに、不動産登記法の改正が行なわれ、図法に四四条ノニが設けられました。これは登記の申清にあたり、登記済証を紛失したりしたような場合には、これに代わる保証書を添付することになりますが、この保証書による登記の申清に際して、保証書の偽造による犯罪の防止を図ったものです。
 簡単に説明を加えますと、保証書による登記の申請があった場合には、登記所では売主の住所あてにその申請に間違いがないかどうかを書面で照会し、売主が三週間以内に間違いのないことを申し出てはじめて登記の申請が受け付けられることになるというものです。
 この改正で、偽造保証書による地面師の横行はある程度防止されることになりましたが、設計により権利害を手に入れ、印鑑を偽造して行なうといった巧妙な犯罪がなかなか跡を絶っていないことは注意すべきでしょう。
 以上述べた土地泥棒を防止するために望ましい維持管理の一つの方法としては、堀や有刺鉄線柵等により、当該土地を囲んでおくことです。これは土壌の搬出ならびに土捨てや塵芥の遺棄等を防止することにも役立ちます。また立札等に所有者の氏名、管理者の住所氏名、電話番号等を標示しておくことも考えられます。広大な土地であれば、境界線のみならず、要所要所に標識を立てておく必要がありましょう。
 なお境界棺は、木棺よりは石やセメント棺など腐朽しないものを根深く設置する方がよいでしょう。そしてそれら棺のある正しい住設を容易に把握し得るよう、土地家屋調査上等による実測図を備えておく必要もあるといえます。
 雑草が生い茂っていると、蚊や害虫が発生し、近所に迷惑を及ぼす結果になることがあり、また雑草が枯れると火災予防上も好ましくないことになります。とくに最近大都市周辺では、無秩序な宅地開発でスプロール現象(虫食い状態)が起こり、地価の値上がりを期待しての売り借しみや、人手不足や生産調整のための休耕状態の荒地がふえ、雑草による花粉病や害虫の発生源となっている場所が少なくありません。
 土砂崩れの危険はないか、排水の機能が損われていないかなど、維持、修理、保存の管理が必要です。場合によっては、改良行為の必要なこともあるでしょう。

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