地価の下落

 地域によって差異はあるものの、日本の地価は十年間も下落傾向が続いているため国民も、下落を前提とした行動をする人が増えてきている。事例を挙げてみると、地価が上昇しているときには、よほどの理由がなければ土地を売却したくない、と考えるのが普通の心理である。逆に、地価が先き行き下落しそうだと予測すれば、早期に売却しようと急ぐのが人間の心理である。最近では九六年の夏頃から土地の在庫数が増え始めた。首都圏と間西圏における土地の在庫数の推移では、九五年から住宅バブルがふくらみ、土地の取得に拍車がかかり在庫は減少へと向かっていった。しかし住宅の販売が低迷し、不況感が強まるにつれ土地の在庫は首都圏、関西圏ともに急増した。
 首都圏の各都県別にみた土地の売却依頼件数の推移では、「土地を売却して現金化したい」という人が地価下落で増え続けている。
 また、所有する土地を売却するだけではなく土地を有効に活用して収益を上げるようにしたい、という地主も増えている。地価の上昇が続き、保有しているだけで資産価値が上がっていった時代ではなくなったからである。

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 地価の上昇によって郊外へと追い出されていた人達が、地価の下落によって通勤や生活に便利な中心部に戻り始めている。
 年々、新築分譲マンションの購入者は、交通の便利なところに移っている。また、この希望に沿うように、住宅供給の場所も都心に近いところになってきている。
 この動きを反映して、東京都、都心の港区などでも人口の増加現象がみられるようになってきている
 この回帰現象によって、郊外の住宅需要は大幅に弱まって、売れ残りの住宅が増えた。
 また、郊外の賃貸の需要も同じように急速に低下していて空室も急増した。
 このように、都心部の地価下落によって、住居の都心への回帰現象が促進された。そのため郊外の住宅地の需要が減少しており、地価の下落がこれから本格化することになる。
 地価の下落は、住宅価格の下落を意味することにもなる。地価上昇のときには、住宅を早く買った人がその恩恵を受けるが、地価下落のときには、遅れて買った人が安く手にすることができる。
 新築住宅も時間の経過とともに安くなり、安い新築に押されて中古物件も更に安くなるという構図ができた。その結果、住宅の「買い換えのメカニズム」が壊されてしまったのである。
 新築マンションを購入して数ヵ月から三年未満で売却しようとしたときの価格は、その値下がり幅の大きさに驚かされる。これでは、自宅を売却して買い換えることは一般的には困難で、今後の住宅市場の回復に暗い影を投げかけることは必至である。
 住宅の供給地域が中心部に移って、しかも価格は段々と低下して、更に、先行して住宅を購入した人達の資産価値が二〇〜四〇%も目減りしている事例を知ることによって、「これからは、もっと優良な住宅がもっと安く買える」のではないか、と期待して、住宅の購入に際して素早い決断をしなくなった。従来のように価格が上昇しているときは、購入の決断の遅れは、高くなった住宅を買う羽目に陥ることになるから、即断即決の姿勢を持つ人が多かったのである。全く逆転してしまった。
 もう一つの現象は買い急ぎをしなくなっただけではなく、購入意欲が減退して、「住居は賃貸でも構わない」とする人も増えている。価格の下落で住宅購入による資産形成に期待が持てなくなったことの影響は大きい。
 不動産の価格が下落したことによって、その収益性が高まり金融商品としての魅力が回復してきた。その結果、所得の高い層や資産家が不動産の投資に動き出した。特に、超低金利政策が続いているために、低い金利に嫌気がさして投資意欲が高まっている。
 東京都心の公示地価の推移を指標では、都心の地価の大幅な下落をあらためて知ることができる。
 逆に、これだけ下落幅が大きいと、賃料が少しくらい低下しても投資利回りは上昇して魅力的な水準になった。
 地価を含めて、不動産価格の下落は、郊外より都心の方が値下がり幅も大きいため、東京が首都圏では、もっとも魅力的な地域になっている。
 最近では、東京の不動産に外国の投資家の一部が関心を持っているようであるが、収益性が価格下落で向上していることは確かである。

不動産

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