区分所有権

数人の者が、一棟の建物を区分して各自がその一部を所有するときは、区分所有権または区分所有があるといわれます。民法も建物の区分所有を認め、民法二○八条では、「数人ニテ一棟ノ建物ヲ区分シ各其一部ヲ所有スルトキハ建物及ヒ其附属物ノ共用都分ハ其共有ニ属スルモノト推定ス」「共有部分ノ修繕費其他ノ負担ハ各自ノ所有部分ニ応シ之ヲ分ツ」と規定していました。この現定は、いわゆる階層所有権に開するフランス民法六六四条に由来するものであるといわれています。この規定の適用の対象となったのは、実際に棟割長屋のように、一棟の建物を縦に垂直線的に区分した建物所有に限られ、構に水平線的に区分して各階層を所有する、いわゆる階層区分所有にこれを認むべきかについては争いがありました。しかし、第二次大戦後における都市開発、都市への人口の集中、密集化は、必然的に宅地の払底、住宅難を意起し、それを打開するために、都市の近代化とあいまって、土地利用の高度化が促進されるに至りました。かくして、鉄筋アパートやビルディングなどの中高層建築物が急激に増加するに至り、マンションの売買が近時に非常に多くなってぎたことはこの事情を物語るものです。多数の高層建築物の現出化は、従来のように単純な縦割式の棟割長屋を対象とする法律では、それとは種々異なるその複雑な所有関係を処理するのに対処できず、新たな現象に対応する法律が要請されるに至りました。

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不動産

建物の区分所有とは、数人の者が、一棟の建物を区分してその各部分をそれぞれ各個の物として所有することをいいます。一棟の建物を縦に垂直線的に区分して所有する場合たると横に水平線的に区分して各階層を所有する場合たるとを問いません。本法は、階層別または部屋別の区分所有たるとを問わず、すべての区分所有に一律に適用されるのです。物権の客体は独立の物であるという原則からすれば、一棟の建物の一部に単独に所有権を認めることは、この原則の例外といえます。もっとも、本法がすべての区分所有に一律に適用したことについて異論がないわけではありません。つまり、棟割長屋式区分所有と高層建物の区分所有を比較すると、建物の管埋、建物の敷地の利用関係、共用部分の範囲などについて、質的に両者間に重要な差異が存することから、両者を一括し一律に扱うべきではなく、適用の対象を限定すべきではなかったかというのです。例えば、この点を考慮しつつ、面積なり部屋数によって相当大きな堅牢な建物を対象として立法すべきではなかったのかという指摘や階層区分所有のみを対象とすべきであったというような指摘が行なわれています。確かに、両者間に種々の差異を認め得るにしても、現実には両者のほかにも各種の中間的な区分所有の形態があって、適用の対象を限定するにしても、限定の仕方自体にも問題があって、その実情を考慮すれば、立法者が、かように対象を一括して規定づけたのもやむを得なかったものと思われますが、本法の現定の中には、主として高層建物のような階層的区分所有を予想した規定も少なくないため、規定の適用、解釈に当たっては、慎重な態度をもって臨む必要があります。
いかなる建物の部分が区分所有権の客体となるか問題となります。かつて、判例は「其ノ区分セラレタル各部分カ独立ノ建物ト同一ナル経済上ノ効力ヲ全フスルコトヲ得ル場合ニ限ルモノニシテ、其ノ部分カ他ノ都分ト併合スルニ非サレハ建物トシテノ効力ヲ生スルコト能ハサル場合ニハ」一棟の建物として所有権の目的になりますが、各部分につき区分所有権を認めることはできないとして、いわゆる独立利用説をとっていました。学説もこれを支持していました。
本法もその趣旨においてはこれと異なるものではありません。つまり、区分所有の目的となり得るものは、「一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各部分」であると規定しました。したがって、この趣旨からすれば、区分所有権の客体としては次の二つの要件が具備されていなければならないことになります。
独立して区分所有権の客体となるためには、建物の部分が構造上区分されたものでなければなりません。ここで構造上区分されたとは、棟割長屋の各戸、アパートの各住戸、ビルディングの各室のように、建物の構成部分である障壁その他によって他の部分と截然と区別されていることをいいます。したがって、日本家屋の一部屋のように、一都の個所が土壁で障壁となっていても、他の個所が襖や障子によって仕切られているものは、構造上区分されているとはいえないため、区分所有の客体とはなり得ません。なお、出入口以外の個所がシャッターによって仕切られている場合については、シャッターも隔壁に準じて考える見解もありますが、その建物の部分を全体的、総合的に観察し、それが構造上独立した部分といえるかどうかを基準として判断すべきです。
区分所有の客体となり得るためには、建物の部分が独立して建物としての用途に供することができるものでなければなりません。前掲判例が建物の都分が「独立ノ建物ト同一ナル経済上ノ効用ヲ全フスルコトヲ得ル」ものであることといっているのと全く同じ意味です。したがって、建物の一部であっても、廊下や階段室やエレベーター室は、たとえ構造上他の部分と区別されていても、区分所有の客体とはなり得ません。また、隣室を通らなければ建物の外部に出られないビルディングの一室も区分所有の目的とはなり得ません。独立して建物の用途に供し得るものではないからです。なお、「建物としての用途」の中には、法文に示されている住居、店舖、事務所、倉庫のほか、講堂、劇場、待合室なども含まれるとされます。
民法は一物一権主義の原則をとるため、本来一棟の建物は一個の所有権の客体でなければならないことになります。したがって、区分所有が成立するためには、建物の各部分が本法所定の要件を具備するだけでは足らず、所有権の客体として別個のものでなければなりません。問題となるのは、一棟の建物の全部が一人の所有に属する場合にもその建物の区分所有が認められるかどうかです。判例では、建物所有者は、その建物が登記の上で区分されていないときでも、その一部を譲渡すれば、区分所有が成立するという学説も、区分所有権の客体となり得る要件は、独立して建物としての用途に供し得ることであるため、所有者は同一人でなくても、区分所有の成立を妨げないとする所有者が区分所有を成立させようとする意思を表示したときに区分所有権が成立するものと考えるべきです。このような所有者の意思は、区分所有の登記によって明瞭となります。これを認めると抵当権の設定もできることになるという取引上の便宜があります。
なお、一般に、区分所有の成立原因として、建物の区分所有の登記によって、区分所有が成立するといわれています。つまり建物の権利関係は登記によって公示されるため、建物所有者が登記の上でその建物を区分すれば、これによって区分所有が成立します。
建物を新築した場合、所有者は、一棟の建物の一部を一個の建物として登記することができます。すでに表示の登記がなされている建物について、所有者は、建物の区分の登記を申請することができます。これによって区分所有が成立します。なお、区分所有の登記をすればこれをもって第三者に対抗し得ることはいうまでもありません。

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