区分所有者の権利義務

各区分所有者は、それぞれ別個の専有部分を所有しているものの、その専有都分は同じ棟の建物であり、しかも、その建物の共用部分は区分所有者全員またはその一部の共有に属しているので、区分所有者の権利義務関係は、その共同関係によって、互いに拘束されることになります。区分所有者相互の関係は、単なる相隣者相互間ないし単なる共有者相互間の場合よりも密接かつ複雑であり、かつ、単なる孤立的物権の併存関係として置かれず、相互に拘束される関係にあり、団体的規制を必要とするものです。しかも、区分所有者の共同関係は、団体性の強いもの弱いもの様々であるため、実際に区分所有者間の法律関係もそれに対応して種々あり得るものと思われます。本法は、区分所有者の権利を制限し、協力義務を負わせることによって、建物の保全と利用の調節とを図り、共同利益の維持を図りました。同法五条は「共同利益」という概念の下にこれを規定づけ、区分所有者は、建物の保存に有害な行為をしたり、その他建物の管理または使用に関して区分所有者の共同利益に反する行為をしてはならないとしています。この規定は単なる訓示規定ではなく、民法一案三項で規定する権利濫用禁止の法理と同じ趣旨です。いかなる行為がここにいう共同の利益に反する行為になるかは問題ですが、一般に、その判断基準を一般抽象的に示すことは困難であるため、その行為の必要性、行為者の受ける利益ならびに他人に与える不利益の性質および程度、他の手段の可能性など諸般の事情を考慮して、個々の具体的場合につき社会通念によって決するほかはないとされます。そして、具体例として、建物の不当毀損行為、建物の不当使用行為、いわゆるニューサンスに当たる行為などは、これに該当します。このような共同の利益に反する違反行為をなした者に対しては、区分所有者は、自己の権利に基づいて、その行為の停止を訴求でき、損害を被ったときはその賠償を請求することができます。

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不動産

区分所有者は、共有部分については、共有の関係にあり建物の敷地についても、共有または借地権の準共有の関係にある場合が普通であるため、管理費用や公租公課の立替えなどによって、区分所有者間に、債権債務関係が発生する場合が少なくありません。かかる債権を保護するために、債務者の区分所有権および建物に備えつけた動産の上に先取特権を有するものとした先取特権によって担保される債権は、区分所有者が共用部分又は建物の敷地につき他の区分所有者に対して有する債権であるため、その中には、管理費用、公租公課、変更費用などの立替えによって生じる債権、共用部分または建物の敷地に関する他の区分所有者の不法行為による損害賠償債権なども含まれます。
なお、区分所有者間の権利義務として、区分所有者は、自己の専有部分または共用部分を保存し、または改良するために必要な範囲内で、他の区分所有者の専有部分または自己の所有に属しない共用部分の使用を請求できるとされます。この請求の相手方は、現に専有部分または共用部分を使用している区分所有者またはその借主です。相手方が承諾しないときは、承諾にかわる判決を得なければならず、また、使用によって相手方に損害を与えたときには償金を支払わなければなりません。
階層的区分所有の場合には、各区分所有者は、その所有部分を保待するために、敷地についてなんらかの利用権を有しなければなりません。この問題は重要であるにもかかわらず、本法は、区分所有者が敷地利用権をもたない場合の、地主の区分所有者に対する区分所有権売渡請求権を規定しているにすぎません。そこで、建物全体の敷地の利用権と、ある区分所有者の所有部分の真下に当たる土地の利用関係、区分所有者相互間の敷地利用権の関係、共有部分についての敷地利用権の関係など、複雑な問題が生じるに至ります。この間題を民法の一般原則にゆだねるとしても、基本的に区分所有制度が建物の区分所有とその敷地の権利とに関する制度であり、反面、民法が土地と建物とを別個独立のものとして扱う原則をとっている以上、民法にその解決をまかせることは必ずしも十分とはいえません。同時に、特別法で民法の原則に対して例外を認めることは慎重でなければならず、借地法との関係もあることです。そこで、区分所有権法は、区分所有権と共用部分の共有持分との不可分性、一体性に関する規定を置くにとどめ、敷地の権利との一体性を認めず、そのため敷地の権利に関する規定を置かなかったようです。現状においては、土地の立体的利用としての高層建物の事態を把握し、区分所有権法ないし民法の枠が許す限りでの、最もそれに適合する法律構成をとるよりほかはありません。
敷地の所有権が区分所有者の中にある者、または、区分所有者以外の第三者に属する場合には、その使用する権限は、賃借権を準共有しているものと考えるべきです。このように準共有していると考えると、例えば区分所有者の一人が賃借権の準共有持分を譲渡した場合その法律関係をどう解するかは問題です。一定条件の下に譲渡性を認めるべきか民法の原則に従うべきかどうかは今後の課題です。一般に、区分所有者の一人が区分所有権とともに賃借権の準共有持分を譲渡した場合、賃貸人である土地所有者が解除権を行使すると解除の効果はその区分所有者に対する関係においてのみ生じ、その結果、土地所有者はその区分所有者の有していた持分を取得することになるため、土地所有者は、譲受人に対し、区分所有権を時価で売り渡すべきことを請求し得ます、いわゆる区分所有権売渡請求権を有することになるといわれています。この権利は、借地上の建物買取請求権と同じく一種の形成権です。このことを区分所有権法六条は規定しています。収去により建物の一部を破壊することは国民経済上好ましくないので、本案は、取去権者のために、専有部分の取去請求にかえて、区分所有権の売渡請求権を認めたのです。同様に、区分所有者が建物の敷地を共有している場合において、区分所有者の一人が強制競売などによってその土地に対する共有持分のみを失うと、その持分を販得した者は、その持分を失った区分所有車に対して、区分所有権売渡請求権を有することになります。

不動産

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