留置権

留置権とは、他人の物の占有者が、その物に関して生じた債権の弁済を受けるまでその物を留置して、債務者による弁済を間接的に強制する担保権です。例えば他人の物を修繕した者が修繕代金の支払いを受けるまでその物の引渡しを拒み、あるいは、費用償還請求権を有する者がその支出した必要費もしくは有益費の償還を受けるまで物を留置することができるなどは、この留置権の作用です。このように、留置権は、他人の物を留置し、その引渡しを拒むことをもってその本体的効力とするものですが、これによって、留置権者の債権は担保されることになるため、民法は、これを単なる債務者に対する拒絶権能とはせず、占有物上の独立の物権としました。したがって、留置権者は、留置物を留置しあるいは引渡しを拒む権利をもって債務者のみならず債務者から留置物を譲り受けた者にも対抗することができ、さらに、他の債権者が留置物について競売あるいは強制執行をなしたときにも、弁済を受けるまで競落人に対して引渡しを拒むことができるのです。なお、留置権は担保物権であるから、他の担保物権と同様、債権に付従し、債権に随伴するとともに、不可分性を有します。もっとも、留置権は、留置物を留置し、その引渡しを拒むことをもってその本体的効力とするものであって、留置物の交換価値を目的とするものではないため、優先弁済権がないのを原則とし、したがって、物上代位性を持ちません。

スポンサーリンク

不動産

留置権は、質権や抵当権のように当事者の契約に基づいて生じるものではなく、一定の状況が存する場合に、法律上当然に生じるものです。民法が留置権の成立をこのようなものとして認めたのは、公平の原則に基づきます。他人の物を占有する者が、その物に関して生じた債権を有する場合に、その債権の弁済を受けないにもかかわらず、その物は返還しなげればならないとすることは、公平に反するからです。留置権と同じく公平の観点から民法が認めた制度に、双務契約における同時履行の抗弁権があります。これは、双務契約における各債務に履行上の牽連関係を認めて、一方の債務が履行されるまで他方の債務の債行を拒絶し得るとすることが公平に通じるというものですが、いうまでもなく留置潅は物権であり、これをなんびとに対しても主張し得るのに対し、同時履行の抗弁権は、双務契約の効力として相手方の請求に対する抗弁をその内容としているため、両債務が一個の双務契約から生じている限りにおいてこれを主張し得るにすぎないものです。
留置権は、当事者の意思いかんにかかわらず、以下に述べる要件を備えるとき、法律上当然に成立するものであって、当事者は契約をもってこれを成立せしめることはできません。もっとも、留置権は債権者の利益のために存する権利であって公益上認められる権利ではないため、留置権の成立後にこれを放棄することはもとより、あらかじめ留置権を成立せしめない旨の当事者間の特約も有効と解すべきです。留置権の成立要件は次のとおりです。
他人の物の占有者がその物に関して生じた債権を有すること。留置権は公平の原則に基づいて認められる制度であるため、留置権が成立するためには、債権者の債権と留置権の目的たる物との間に一定の牽連性が存することを要します。つまり、債権が物に関して生じたることが必要です。留置権を単なる給付拒絶の抗弁権とはせず、担保物権として構成したことの結果です。
債権が弁済期にあること。債権が弁済期に達しない間は、留置権は発生しません。弁済期以前に留置権の成立を認めるときは、物の返還請求権者は、債権者に弁済しなければその物の引渡しを求めることができなくなる結果、期限前の弁済を強制されるのと同一の結果となるからです。期限の定めのない債権は、債権発生と同時に弁済期にあると解されるため直ちに留置権は成立します。また、債権の弁済の提供を受けた留置権者は、弁済の受領と引き換えに留置物を返還しなければなりません。受領遅滞に陥った者が、債権の弁済の受領を拒みつつ、留置権を主張するというのは、公平に反し、留置権の本質にもとるからです。
留置権者が他人の物を占有すること。まず、留置権の目的は物であることを要します。したがって、留置権の目的は動産あるいは不動産であることを要し、子供を留置したり記名株式を留置することはできませんもっとも、留置権が成立しかつ存続するための要件としては、物の占有があれば足りるため、物が不動産である場合にも、不動産上の留置権を第三者に対抗するために登記をすることは必要ではありません。また、物は譲渡性があることを要します。この点は、留置権が交換価値を目的とせず優先弁済権をもたないとされることから争いのあるところです。しかし、留置権者は競落人に対しても留置物の引渡しを拒むことができ、この場合には実質的に優先弁済権を有するにひとしいため、留置権者に競売権を認めるのを妥当とし、この意味において、物には譲渡性があることを要すると解されるのです。次に、物が他人の物であることを要します。ここで他人の物というのは債務者の所有物であることを要するか。商法はこれを明言しますが民法は物に関して生じる債権であることを要件とするにとどまります。したがって、物に関して生じた債権である以上は、所有者のいかんを問わず、その物を留置し得ると解してよいと思われます。債務者以外の第三者の所有物に担保物権を成立せしめることは約定担保物権にその例をみることができるのであり、また、留置権は債権者、債務者間の公平を目的として債権担保の作用を営む制度だからですしかし、これに対しては、特に、債権がその物に関して生じたという理由のみをもって、直ちに無関係な第三者の所有物をも留置し得るという結論を導くことは正当ではなく、また、これは民法二九八条および三○一条の規定に接触することになるという批判があります。

不動産

留置権/ 留置権の効力/ 先取特権/ 不動産賃貸の先取特権/ 不動産の先取特権/ 不動産の賃貸に伴う先取特権/ 不動産質権/ 抵当権設定契約/ 抵当権設定付随約款/ 抵当権者、抵当権設定者/ 与信契約に基づく根抵当権/ 後発的原因による抵当権の準共有/ 物上保証人の地位/ 抵当権の目的物/ 抵当権によって担保される債権/ 抵当権の効力の及ぶ範囲/ 抵当権の効力が及ばない場合/ 物上代位/ 代位の要件としての差押え/ 抵当権による債権の範囲/ 抵当権の侵害の成否/ 抵当権の侵害に対する救済手段/ 抵当権の優先的効力/ 抵当権と租税優先権/ 抵当権の実行と不動産競売/ 抵当権実行阻止の仮処分/ 競落の効果/ 短期賃貸借/ 抵当権者の解除請求権/ 法定地上権/ 法定地上権の成立要件/ 抵当権付不動産の売買/