責めに帰すべき事由

甲と乙との間に、甲所有の家屋をその敷地とともに5000万円で売る契約が成立し、契約成立と同時に500万円を手付金として乙から甲に渡し、残代金の支払いは六ヶ月後に登記、明渡しと引換えに行なうという契約でした。しかし三ヶ月後に甲の不注意により、火を出して家屋を焼失しまったので、甲は家屋を引き渡すことができなくなったとします。民法によれば売主の責めに帰すべき事由による履行不能の場合には、売主は損害賠償の義務を負い、買主は契約を解除することができます。ところで、責めに帰すべき事由とは、売主自身の故意、過失の他、信義用上、売主の故意、過失と同視すべき事由も含まれます。売主と同居している家族や使用人などの、いわゆる履行補助者の故意、過失や、訪問客の故意、過失による家屋の焼失も、売主の責めに帰すべき事由による履行不能とされます。売主が履行不能の貴任を免れるためには、その不能が自分の責めに帰すべからざる事由によって生じたことを挙証しなければなりません。売主の責めに帰すぺき事由により履行不能となれば、買主は履行不能を理由として損害賠償を請求することができます。この場合の損害賠償は、目的物にかわる損害の賠償、つまり填補賠償になります。土地付家屋の売買において、家屋が全焼して履行不能となっても、士地の引渡しは可能です。しかも土地だけの履行をうけても買主にとってなんらの利益にもならないという特別の事情のないかぎり、買主は、土地の引取りを拒絶して、土地および家屋の全部にかわる填補賠償を請求することは、原則としてできません。したがって、買主としては、士地は引き取るが、焼失した家屋については、家屋を引き渡してもらったら通常得たであろう利益の全部について賠償を求めることになります。具体的には、その家屋の有する交換価格の賠償に帰着します。間題は、どの時点での価格で暗償請求ができるかで、近年の最高裁の裁判例では、履行不能にもとづく損害賠償は、原則として、不能となった焼失当時の家屋の時値により算定されます。しかし、例外として、家屋の価格が引き続き高騰しつつあるという特別の経済事情がある場合には、買主は、売主が家屋を焼失した当時、その特別の事惰を知っていたこと、または知ることができたはずであることを挙証すれば、その高騰した現在の時価による損害賠償を請求できます。この場合に、買主は、この高騰した現在の価格で他に転売して確実に利益を取得したであろうことを挙証する必要はありません。ただし、買主がこの価格まで高騰する以前に、他に転売する契約をしていたとか、あるいは買主の職業などから判断して他に転売したであろうと予想された場合には、その転売価格による損害賠償しか請求できず、また家屋の価格が一且高騰したが、その後下落した場合に、買主がその高騰した価格による損害賠償を求めるためには、その高騰した時点で転売その他の方法で高騰価格による利益を碓実に取得したであろうことを挙証しなければなりません。

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買主が家族とともにその家屋に居住するはずであったのに、それができなくなったことによる損害その家屋を他人に賃貸し、またはそこで営業を営むはずであったのに、それができなくなったことによる損害また、その家屋を他に売却する契約をしていたのに、それができなくなったことによる損害なども、売主がかかる事情を知っていたこと、または知ることができたはずであることを、買主が挙証すれば、その賠償を請求できます。このようにして買主の請求できる損害額が、2500万円だったとして、買主は、家屋とその敷地の代金5000万円のうち、手付金500万円を払っただげで、残代金4500万円の支払義務は、いまなお負うています。そこで2500万円の損害賠償請求権をもって相殺し差引き2500万円だけを、土地所有権移転登記と引換えに支払えばよいことになります。
火災保険を付けている家屋を売却するについて、売主があらかじめ保検会社の承認を得ておげば買主は、保検会社に対する火災保険金請求権を取得します。しかし保険会社の承認を得ないで売買をした場合に、その家屋の焼失により、売主が保険金または保険金請求権を取得したときは売主は、買主に引き渡すべき家屋の代償となるべき利益を取得したことになるので、買主には損害賠償の範囲内で、その利益の償還を請求する権利が認められています。これを買主の代償請求権といいます。買主がこの代償請求権を行使して利益を得たときは、損害賠償額からその分だけ差し引かれることになります。
土地付家屋の売買において、売主の過失によって家屋が焼失したときは、買主は履行期の到来を待たずに、その家屋についてだけの契約を解除して家屋にかわる損害賠償を請求することもできます。この場合には、買主は、家屋と敷地との価格の比率に応じて、家屋の代金に相当する債務を免れたうえで、なお被った損害の賠償を請求することになりますが、その結果は、解除せずに填補賠償を請求し、自分の家屋代金相当債務と相殺するのと同じになります。

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