不動産売買の先取特権

不動産の売主が優先的に代金を取り立てることのできる制度として、不動産売買の先取特権があります。売主がまだ代金の完済をうけないうちに、目的不動産を買主に引き渡し、所有権が買主に移転すれば、その不動産の上に、売買代金とその利息につき、売主の先取特権が成立します。売主が単独で移転登記をする際に、代金未払いの旨の登記をしておきさえすれば売主は、買主の所有に帰した不動産を競売法によりみずから競売して、その競売代金から他の債権者に優先して弁済をうけることができ、他の債権者が強制執行をするときに配当加入を申し出て優先弁済をうけることもできます。しかし代金未払いの旨の登記をしておかなければ、他の債権者に対抗しえないだけでなく、競売する権利もないと解されているので注意が必要です。売買代金未払いの間に所有権が買主に移転し、しかも移転登記まですることは、実際には稀です。また目的不動産は引き渡すが、所有権は代金完済まで留保するという特約をすることも少なくなく、この場合には登記名義は売主に留保されます。未払代金を借金のかたちにして、その利息や弁済方法を定め、それについて低当権を設定させることも可能であり、実際にその例も多くなっています。したがって売買による所有権移転と同時に登記も要求される不動産売買の先取特権制度は、あまり利用されていないのが実情です。
留置権の抗弁に対する判決も、同時履行の抗弁に対する判決と同様に、原告にとって一部勝訴の判決となります。家屋の売買において、売買代金の半分を支払った時点で移転登記をし、所有権は買主に移ったが、残代金は三か月後の明渡しと同時に支払う約束で、売主がその家屋を占有しているとします。売主の代金債権は、売買の目的家屋に関して生じた債権にほかならないために、売主は残代金の弁済をうけるまで、この家屋を留置できる権利をもっています。そこで残代金未払いの買主が、所有権を取得したとして、家屋の引渡しを請求する訴訟を起こしたときに、売主が有効に留置権を主張すれば、裁判所は、売主に対して残代金の受領と引換えに家屋を明け渡せという趣旨の判決をすることとなります。原告にとって一部勝訴の判決となります。この判決に従って買主が残代金をもってきてくれれば、売主はこれを受け取り、その時に家屋を明け渡してやればよいことになります。ただし既に買主の所有に帰した家屋を留置し、その間に居住していたのであるために、その間の家賃相当額は、不当利得として、これを買主に返還しなければならないので、実際には、残代金からこの分を差し引いた金額を受取ることになります。留置権は物権であるために、その留置的効力を何びとに対しても対抗できます。つまり代金未払いの買主に対してだけでなく、買主からの譲受人、競落人が引渡しを求めてきた場合にも、売主は留置権をもってこれに対抗することができます。

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