買主の代金未払い

不動産の買主が代金を支払わないときに、売主のとるべき方法として、強制執行によって強制的に代金を取り立てる方法、買主の代金債務不履行によって被った損害の賠償を求める方法、売買契約を解除する方法などがありますが、それ以外にも買主の弁済を間接的に強制する方法として、同時履行の抗弁権と留置権があります。実際上あまり利用されていませんが、不動産売買の先取特権による優先的弁済受領権もあります。不動産の売買契約を結べば、売主は買主が代金を支払うか、または少なくとも代金の提供があるまでは、移転登記、引渡しを拒むことができ、買主もまた、売主が登記、引渡しをするか、その提供をするまでは、代金の支払いを拒むことができます。これを同時履行の抗弁権と言います。例として売買契約と同時に1000万円支払い、残代金2000万円は半年後に、登記と引換えに登記所で支払うことになっていた場合に、半年後の約定日に、売主が登記申請に必要な書類を準備して登記所に出頭しましたが、買主が出頭しなかったか、出頭しても残代金の一部しか持参しなかったとすれば、売主は自分の債務の履行を現実に提供したことになり、買主は履行遅滞に陥ります。しかし売主の登記を移転すべき債務が消滅したわけではないために、後日、売主が買主を相手どって残代金の支払いを請求する訴訟を起こせば、買主のほうで同時履行の抗弁権を提出することになります。しかし買主の同時履行の抗弁が裁判所によって認められたとしても、原告たる売主が敗訴するわけではなく、裁判所は、買主に対し、原告の移転登記と引換えに残代金の支払いをなすべしという趣旨の判決をします。これは売主にとっては、なお一部勝訴の判決になります。また買主が約定の日に残代金を持参して登記所に出頭したが、売主のほうで出頭しなかった場合には、買主が現実に提供したのに、売主のほうでその受領を拒絶したことになります。しかし、買主が一度提供して、受領を拒絶されたとしても買主の代金支払債務が消滅したわけではありません。したがって、その後に買主が売主を相手どって、登記の移転を訴求しても、売主が同時履行の抗弁を提出すれば、判決は売主に対して残代金と引換えに登記を移転せよと命ずるので、買主は一部勝訴の判決を取得するだけであって、無条件勝訴の判決を取得するわけではありません。このような引換給付の判決、特に買主の一部勝訴の判決に従って、売主と買主が登記所へ出頭して、移転登記の申請をし、代金の授受を行なえば、結局において売主の代金取立ての目的は達成されます。しかし買主が売主の一部勝訴の判決の場合に、これに協力してくれなければ売主は目的を達することができません。この場合には、売主は強制執行により買主の一般財産から強制的に代金を取り立てることができます。売主は一部勝訴の判決正本を添付して移転登記の申請をすれば、買主の協力がなくとも単独で登記ができるために、この移転登記を済ませます。次に裁判所に申し立てて、判決正本の末尾に執行文を付与してもらい、これを登記の済んだことを証明する文書とともに執行官に呈示すれば、強制執行が開始されます。執行官は買主の財産を差し押え、換価した競売代金から、売買残代金相当額の金銭を取り立ててくれるのです。もし買主が残代金2000万円に相当する預金を持っていることがわかれば、売主は裁判所からこの預金の差押命令を出してもらい、ついで転付命令を申請してこれを出してもらうと、預金を自分の債権として独占することができます。しかし代金の完済を渋っている買主に、このような預金のあるのを期待することは、実際上不可能となります。そこで売主としては、買主の動産か不動産について強制執行することになりますが、その場合には換価代金から自分だけが優先的に弁済をうけるのではなく、配当加入を申し出た他の債権者にも分配しなければなりません。もし差し押えて換価した競売代金が配当加入を申し出た債権者全員の債権総額に満たないときには各自の債権額に按分して分配しなければならなくなり、残代金の全部は取得できないこととなってしまいます。

スポンサーリンク

不動産

不動産売買による所有権移転/ 所有権移転登記の手続/ 所有権移転に必要な書類/ 買主自ら保存登記/ 売主に対して私有権移転登記/ 競合する保存登記/ 中間省略登記の意義/ 登記の効力/ 第三者に対抗/ 代金の支払い/ 一時払い/ 不動産の割賦販売/ 代金支払場所/ 代金支払時期/ 同時履行/ 同時履行の抗弁権/ 契約履行の費用/ 債務不履行/ 債務不履行の相手方の救済/ 業務不履行/ 引渡請求/ 債務不履行/ 履行遅滞の効果/ 登記の意味/ 対抗要件としての登記/ 登記と売主の重要性/ 第三者に対抗/ 未完成物件/ 履行遅滞による損害賠償/ 責めに帰すべき事由/ 売主の代金受領拒絶/ 受領遅滞の効果/ 売主の履行遅滞効果/ 不動産売買の先取特権/ 買主の代金未払い/ 買主の登記拒否/ 不完全履行責任と担保責任/ 瑕疵担保責任と契約責任/ 契約面積と実測面積の相違/ 土地の一部が他人の場合/ 土地所有者が他人の関係/ 購入不動産に他人の抵当権/ 業者の説明広告との相違/ 行政法規の利用制限/ 第三者が占有している土地購入/ 契約の解消/ 契約の無効/ 契約の解除/ 契約解除の方法/ 契約解除と相手方との関係/ 契約解除による第三者との関係/ 付随条項違反による契約解除/ 合意解除と第三者/ 手付金放棄と契約解除/ 事情変更による契約解除/