不完全履行責任と担保責任

不動産売買においては、売主は売買の目的となっている財産権を、契約どおり買主に移転しなければなりません。ところが財産権の全部または一部を移転することができず、あるいは移転しても、そのものに暇疵、数量の不足など不完全な点があった場合に、売主は買主に対して、いかなる責任を負うことになるか。また債務の本旨に適しない履行があった場合は、不完全履行による債務不履行責任か、売買に関する担保責任か、売主の担保責任は不特定物の売買についても適用されるかということになります。瑕疵担保責任の本質について、法定責任説と契約責任説とが対立しています。法定責任説は、暇疵担保責任が、法律政策的制度による法定責任であるとしています。つまり取引の信用保持に根拠をおき、欠快などのある給付をうけた買主の救済制度であるとし、売主の故意、過失を間わない、無過失責任であるとしています。不完全履行は、履行遅滞、履行不能とともに債務不履行の態様であり、債務者の責めに帰すべぎ事由によって、達法に債務の本旨に適しない不完全な給付がなされることです。したがって売主が故意、過失を否定し証明すれば、責任を免れることになります。数量を定めて特定物の売買をした場合で、契約の時すでに数量が不足している場合は、その部分について売主は履行しようにも履行できません。その部分は原始的一部不能であり、不能部分については契約は無効、債務は存在しないことになり、履行の責任が発生せず公平に反します。それを填補するのが担保責任制度です。債務不履行が間題となるのは、契約のとき給付が可能で、履行期には不能である後発的不能の場合です。暇疵担保責任は等価交換という有償性の欠陥に対する救済制度であるために、無償の贈与には原則として適用されません。暇疵担保責任は特定物売買にかぎり適用され、不特定物には適用されないとするのが通説の立場です。この点については、暇疵担保責任と債務不履行との関連、その本質の解明をめぐる問題として、はげしく議論されました。不特定物にも暇疵担保責任の適用を認める説は、民法五七○条には特定物に限るという文字がなく、また不持定物でも、給付をなすに必要な行為により、持定集中し、合意、指定によっても特定するのであるために、特定物売買と同視してよく、また買主が欠陥があるものでも一応受領しているのであるために、契約は不完全ながら履行されていることになります。また商事売買では特定物、不特定物の区別なく担保責任を認め、商法五二六条では善意の買主に検査義務、瑕疵または数量不足についての通知義務を課しているために、民事売買でも同様に考えるべきであると主張しています。判例では、担保責任は特定物にかぎるという態度をとっていましたが、その後不待定物売買にも暇疵担保責任を適用すべぎであると変更され、戦前の判例の立場は戦後にも引きつがれました。ところが買主が暇疵を認識したうえで履行として認容しないかぎり、完全な給付の請求権を有する旨の判決がなされました。そして受領をたんに受け取るというのではなく、暇庇のあることを認容して、履行を認めることを要するとされたので、このように受領を厳格に解すると、不特定物売買で暇庇担保責任を迫及する事例はきわめて限定されたものになります。この判例の見解の延長線上には、不特定物は債務不履行、特定物には暇疵担保責任とする割り切った結論がうかがえるように思われます。今までの単に受取りの前後で特定集中させ、それによって償務不履行と暇疵担保責任を峻別してきた判例を修正したものとみることができます。このように判例の変化とともに、学説も、不特定物売買における買主の請求権について、信義則を援用したりして、期間制限を課すべきであるとし、両説の結論の差はなくなっています。

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