購入不動産に他人の抵当権

購入した不動産に第三者の権利が付着していたという事例は少なく、通常の取引ではそれらの権利を消滅させてから契約したり、買主がそれらの権利負担等を売買代金に析り込んで取引するからです。売買時点の不動産登記簿を正確に閲覧することによって、または現物の確認によって本事例のようなトラプルはほとんど避けることができます。しかし、登記簿に記載されない権利もあり、後日になって回復登記の請求をうける場合も考えられます。分譲地販売で造成工事費などの資金調達のため、とりあえず造成地を担保に入れることが時として行なわれ、その担保物権が登記留保されている場合、あるいは造成工事業者の工事代金を被担保債権とする留置権が行使されている場合、あるいは土地の登記簿には地上の建物が借地人によって登記されると発生する賃借権は、登記されないのがほとんどです。特に売主が担保物権の設定を隠して売りつけるという手口には種々あるようです。最も多いのが権利書だけみせて登記簿をみせない場合登記簿の甲区、乙工欄が別異の不動産の部分を綴り合わせている場合などがあります。
権利の暇疵がある場合の担保責任と、買主からする低当権等の抹消の問題です。目的物に地上権、永小作権、地役権など第三者が使用収益する権利の対象となっている場合や、不動産質、留置権のように占有を要件とする担保物権の担保物となっている場合、「登記シタル賃借権」が設定されている場合など、対抗力のある他人の権利によって買主の使用収益は当然に制限されます。この「登記シタル」というのは対抗力あるという意味であるために、土地の賃借人の所有する建物について生じる賃借権借家人が引渡しをうけた建物賃借人が引渡しをうけた農地、採草放牧地は、対抗力を有するために「登記シタル賃借権」とみなされます。入会権も登記なしに対抗力があります。およそ売主は買主の利用が他人の権利によって制約されることのない完全な所有権を買主に移転せねばならない契約上の義務を負っています。したがって、他人の権利の売買における財産権供与義務と同じく、付着している権利を売主が取得し、完全な所有権としなければなりませんが、対抗力を具備した権利は消滅させることが困難な場合が多いと思われます。契約のときかかる権利の瑕疵がある場合は一応原始的不能として担保責任を負い、契約後の場合は債務不履行責任を負うことになりますが、民法五六六条は債務不履行の特則であるとすると、いずれの場合も同一の結果となります。買主善意の場合にかぎり、損害賠償の請求が認められ、買主にとって契約を締結した目的が達せられない場合は契約を解除できます。買主が悪意の場合はかかる利用制約を承知のうえ、いわば権利負担を引き受けて売買したのであるから保護されません。

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担保物権が付着している場合は担保物権でも占有を伴わない場合は、買主は使用収益を制限されず、担保物権が必ずしも実行され買主が所有権を失うとはかぎりません。被担保債権が弁済されることが予想されるからです。担保物権が実行され所有権を失った場合にかぎり、買主に解除権が認められます。先取特権、低当権だけを民法は規定していますが、債権担保の目的のためにする仮登記担保等に基づく所有権移転請求権仮登記が付着している場合も同視してよいと思われます。買主はこれらの権利を代備弁済、消滅請求、代位弁済等によって消滅させたときは、売主にその費用の償還を請求することがでぎ、買主がそれによって損害を被った場合は、その賠償を請求することができます。これら権利行使には除斥期間の制限はありません。
不動産の買主は債務者の意思に反しても弁済することができますが、抵当権は元本債権はもとより利息その他の附随債権も担保します。民法三七四条の利息についての二年分の割限も後順位者に対する優先弁済についての制限であるために、債務者はもとより買主は担保債権の全額を支払う必要があります。根抵当権付であるときは、買主はまず元本を確定させ確定債権額が極度額をこえていても極度額に相当する金額の払渡し、または供託によって消滅請求できる仮登記担保付であるときはそれが特定債権を担保するものか、不特定債権を担保するかを確認しなければなりません。仮登記担保によって優先弁済の受けられる利息について、民法三七四条の類椎適用は否定されています。不特定債権を担保させる場合は元本を確定させなければなりません。
売主が担保物権制限物権付不動産を虚偽手段によって買わせしめたときは、買主は担保責任を主張せず、詐欺による取消、不法行為による損害を請求できます。用益を伴わない担保物権の存在が買主の使用取益そのものの障害とならないとしても、少なくとも買主がそれを担保に供して金融をはかる場合は障害となります。したがって契約において一切の権利の付着していない所有権の移転を保証させるようにするのが取引の通常です。

不動産

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