事情変更による契約解除

契約の前提となった諸事情が後に変更しても、契約の内容や拘束力には影響を与えることはありません。しかし契約の典型は有償双務契約であり、その代表的なものは等値交換を原埋とする売買ですが、合意の拘束性はこの等備性を基礎にしているために、等価性が著しく欠ける事態が生じた場合になお契約の拘束力を絶対化して、契約締結時に不等価交換を目的としていなかった当事者に不等価交換を強制することは、信義に反することとなります。ここに事情の変更を理由として契約の解除、あるいは契約内容の改訂を認めようとする事情変更の原則が例外的に承認される理由があります。大審院はかつてこの原則の適用を認めましたが、最高裁の判例には理論として認めるものはあるが、いまだこれを適用したものは見当たりません。しかし下級審にはこの原則を適用した例も少なくありません。
事情変更の原則の適用が必要となるのは、契約の成立時と履行期の間に多少とも時間的間隔がある場合であるために、賃貸借契約、継続的供給契約、将来の債務の保証契約など契約の性質上長期にわたって履行されるもの、または履行期が遠いものにおいてですが、不動産の売買においても履行期の定めいかんにより、また一定の期間をおく売買予約、再売買予約、買戻しの予約などについて適用が必要となることがあり、内容において私法上の契約とかわらない裁判上の和解や調停にも適用が考えられます。
法律行為成立の環境となった事情に客観的に認識する著しい変更が生じたことが必要で、不動産取引においては、約定価格と時価との著しい開きがあり、契約の自由に関する公法上の制限の出現などについて認められています。しかし、当事者の個人的事情の変更では認められません。

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事情変更の不予見では事情変更について当車者双方が予見せず、かつ予見しえなかった場合にかぎられます。裁判例としては、昭和19年頃売買契約後、売主の居住する家屋が戦災により焼失した場合につき、戦災は予見すべきであったとした前掲最判昭和29年1月28日、昭和20年頃の建物売買契約につき、その後の物価高騰は予見すべきであったとした大阪地判昭和25年2月15日などがありました。しかし、インフレを予見しうべき事情変更とはみなかったものも多くあります。
事情変更の原則は信義則の一適用と考えられるために、事情の変更そのものが当事者の責めに帰すぺき事由によって生じたのでないことを要するのは当然といえます。
著しく信義衡平に反することは契約が効力を持続することによって、当事者間に信義に反する不衡平が生ずることです。たとえば、最判昭和29年2月12日は、建物の賃貸人と賃借人との間に昭和18年頃裁判上の和解が成立し、賃借人は昭和19年12月末かぎり明渡すぺき旨定められていましたが、賃借人の相続人から事情の変更を理由に和解契約の解除を主張し、和解調書の執行力の排除を求めた請求異議事件において、いわゆる事情変更の原則により当事者に契約の解除権を認めるためには、事情の変更が信義衡平上当事者を該契約によって拘束することが、著しく不当と認められる場合であることを要し、前記事情は客観的に観察されなければならない、としたうえ本件において和解成立当時より原審口頭弁論終結の時との間に、戦災等のため原審認定のような住宅事情の相違があるからといって、本件和解につき直ちに上告人の解除権を容認しなければならない信義衡平上の必要は認められない旨判示しています。この要件は事情変更による解除権を認容する基準であるとともに、その制限を目的とする基準でもあります。その意味で、履行が遅れたために事情変更が生じた場合には、遅滞の原因が解除権の援用者側にあってはなりません。目的不動産の価格が著しく高騰しても、それは売主の移転登記義務不履行の間に生じたものとして、売主からの事情変更による解除の主張を認めません。

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