借地権付土地建物の売主の責任

売買契約成立時の事情により、売主の責任の内容が違ってきます。第一に賃借人が対抗要件を具備しており、買主に対抗できることを売主、買主ともに知りつつ売買契約を締結した場合は、所有権移転手続を完了したら、売主は債務不履行責任も担保責任も負うということはありません。第二に対抗要件を具備する借地権、借家権につき、売主と買主との間に売主の責任で借地権、借家権を消滅させる旨の合意があった場合はどうなるかでは。合意の性質をどう解するかが間題となりますが、消滅を停止条件とする売買契約の成立にすぎないと解されるときは、消滅が不能に確定すれば売買が不成立となったのみで、売主は債務不履行による責任を負うことはありません。しかし合意が債地権、借家権の消滅を売主の履行義務とする内容の意味を含むとすれば、売主は履行不能責任を免れることはできないことになり、損害賠償義務を負担することになります。

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売買契約の解除も当然に間題となり、第三に前記のような合意がなくても、価格その他の客観的事情を酌量するとき、売主に対し借地権、借家権の消滅義務を認めるベきであると思われる場合は少なくありません。つまりこのような場合にも、買主の損害賠債請求及び契約の解除が当然に間題となり得ます。第四に、借地人、借家人が対抗要件を具備していない場合、売主は借地権、借家権の消滅につき責任を負うかでは、借地人、借家人は買主に対し対抗力を有しないのであり、対抗要件不備を理由に借地権、借家権の消滅を実現できるのは買主の権限に属するというべきで、売主が消滅義務を負担することはありません。しかし、買主が権利濫用、背信的悪意者等の法理により、買主の明渡請求がしりぞけられた場合、売主は責任を負うか否かが間題となります。原則としては負わないと解されますが、売上が買主をそそのかして買わせた場合は、損害賠償責任を負うというべきです。責任原因は不完全履行、担保責任および不法行為が考えられますが、買主の解除まで認めるのが妥当であるために不法行為は不適切です。また売主は借地権、借家権の存在を知っているために担保責任も適切ではなく、不完全履行とみるのが無難になります。第五に、買主は売主に敷金引渡義務を負います。この場合は賃料未払い等の金銭債務が借主にあるときは、買主は、それらを控除し残金を売主に引き渡すことになります。権利金は一般的に借主に対する返還義務がないとされています。しかし権利金の性質が賃料の前払分としての性質を有するときは、売主が買主であって期間の相当賃料分を控除し、残金は買主に引き渡すべきです。
一方で、貸主は所有権者として目的物を売却処分することは自由にできます。他方で、貸主は借主に対し目的物の使用が支障のないようにする義務を負担しています。そこで、この権利と義務はどう調整されるかが問題となります。この間題については、借地人、借家人が対抗要件を具備しているか否かで違ってきます。借地人、借家人が対抗要件を具備している場合は、売主たる賃主の地位はそのまま買主に承継され、借主は支障なく使用を継続することができるために、売主が借主に損害賠償責任その他を負担することなどはまったく生じません。解約申し入れ、更新拒絶の正当事由の可能性の点において、買主が高い、例えば売主より買主が資力が少ない時でも、売主は借主に対しなんら責任を負うものではありません。次に借主つまり借地人借家人が対抗要件を具備していない場合はどうなるかというと。この場合では買主が借主は対抗力を有しないことを理由に明渡請求をすれば、それが認められるために、借主は借地権、借家権を失い、目的物の使用は不能になるわけです。そこで借地契約、借家契約が中途で消滅させられたことによる損害賠償請求権が借主に発生することもあります。その場合に間題となるのは損害賠償請求の相手方は売主か買主かという点です。単純に考えると、売主たる原貸主の負担する使用させるぺき義務の履行不能とみて、売主に損害賠償責任を生じるようにみえます。しかし借主が売主に対し履行不能を理由に損害賠償を請求した場合、売主が賃貸人の地位の譲渡につき買主との間に合意があった旨を主張して自分に損害賠償責任はないと抗弁したら、合意が事実であれば借主は買主を相手に損害賠償を請求しなければならない立場に置かれます。契約上の地位の譲渡については、一般に、契約の相手方の承詰を必要とするために、賃貸人たる地位の譲渡においても、賃借人の承諾を要するのではないかという間題も生じます。判例は、賃貸土地の譲渡の事案で、土地の賃貸借契約における賃貸人の地位の譲渡は、賃貸人の義務の移転を伴うものでありますが、賃貸人の義務は賃貸人が何びとであるかによって履行方法が特に異なるわけのものではなく、また、土地所有権の移転があったときに新所有者にその義務を認めることがむしろ賃借人にとって有利であるというのを妨げないために、一般の債務の引受の場合と異なり、特段の事情のある場合を除き、新所有者が旧所有者の賃貸人としての権利義務を承継するには、賃借人の承諾を必要とせず、旧所有者と新所有者間の契約をもってこれをなすことができると解するのが相当であると判示し、借主が売主を被告に損害暗償を請求したのをしりぞけました。よって借主は、売主、買主間に賃貸人たる地位の譲渡につき合意があったか否かを調査したうえで、合意があったときは買主、無かったときは売主を相手に損害賠償請求をしなげればなりません。相手を間違えると敗訴し、改めて相手を替えて訴訟提起をしなければならなくなります。

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