抵当不動産の買主と抵当権者

他に抵当に入れてある不動産でも、新有者は有効にその不動産を処分することができます。しかし買主としては、売買の目的を十分に達成するためには、抵当権を消滅させることが必要です。なぜなら、たとえ抵当不動産を買い受けたとしても、抵当権が実行されれば、買主は所有権を失うことになり、そうでないとしても、もう一度買い取らなければならないことになり、いずれにしろ最初の売買は意味を失ってしまうことになるからです。他方、抵当権者としては、この売買から利益をうけることができないことは当然ですが、同時に損害をうけることもないかという点が関心事となります。
民法はこの問題については比較的多くの規定を散在させています。それによれば、買主についての現定、概観、抵当不動産の買主は、まず第一に滌除の手続が終わるまで売主に対して売買代金の支払いを拒むことができます。第二に買主は抵当債務を弁済することができ、それによって抵当権を消滅させることができます。もっとも、これは抵当権のみに関する規定ではない。そこで、第二としては、滌除をあげるべきことになります。つまり、買主は以上の弁済のほかに、抵当不動産の代価を提供して、低当権を消減させることができます。第三に、買主が自ら出損して抵当債務を消滅させ、したがって抵当権を消減させた場合には、買主は売主に対してその出損の償還を請求することができ、損害があればさらにその賠償も請求することができます。これとは逆に抵当権が実行され買主が所有権を失った場合には、買主は契約の解除をなし、損害があればさらにその賠償を売主に対して請求することができます。
この点に関する民法の現定には二つの基本的な発想方法があります。歴史的にいえば、低当権は非占有質として発達し、またそれを公示する制度としての登記が一般的な意味を持つようになったのは、例えばフランス決を例にとっていえば、民法に遅れること50年余りもたった後の抵当権登記法によってでした。したがって、売買は抵当権につき善意でなされるのが普通であるということ。また、たとえ買主が悪意であった場合でも、抵当債務を弁済すべき義務を負うのは抵当権設定者だけであって、第三取得者たる買主ではない、ということ。したがって民法では、担保責任は買主の善意を前提とするのが普通であるのに、抵当不動産の売買の場合には、買主はとくに悪意であっても売主に対して担保責任を問うことができるとするもののようです。
第三取得者の側で申し立てる滌除も、本来は抵当権の公示制度が存在しない時代に、登記による第三者保護の代用物として、第三取得者が善意であることを当然の前提として、その救済のために認められた制度でした。しかし滌除の場合には、第三取得者の善意悪意を問題とすべきいかなる明文上の根拠も存在していません。民法は低当権者側の権利として、物上代位を認めています。もっとも物上代位なるものは担保目的物が滅失、毀損した場合に、担保物権が消滅した場合にのみ認められる救済手段だとすれば、ここで特ににふれる必要はないわけですが、これに関連して旧民法は売却代金についても先取特権の物上代位を行なうことがでぎるとし、そうしてそれが現行法に受け継がれました。そこで、抵当権者も先取特権の場合と同じように、抵当不動産の売却代金についても物上代位を行なうことができるとしているようです。この点についての判例の態度は必ずしも明らかではなく、学説も分かれています。物上代位を認めるのが通説というべぎですが、これを否定する少数説も有力になってきていることに注意しなければなりません。

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