抵当不動産売買の抵当権者の規定

代値弁済の場合には、抵当権者はたとえその代金によって債権の全部の弁済をうけることができないとしても、抵当権は消滅し、したがってさらに抵当権を行なうことはできません。このような指摘は、売却代金についても物上代位を行なうことができるとする現在の通説によってもなされているところです。これを前提とするかぎり、売却代金について物上代位を認めたとしても、抵当権者にとっては、その意味はほとんどないということになります。実際にも代価弁済という制度はほとんど利用されていないようです。しかし先取特権に関する三三三条のような例外の認められていない抵当権については、売却代金への物上代位は認めるぺきではないとする少数説の解釈に従うべきだということになります。
民法での義務の点についていえば、少なくとも銀行取引の慣行には反しています。銀行取引では、この場合には債務引受けが行なわれるのが一般のようです。そうして学説では、主として担保責任についてですが、売買代金が抵当債務を控除して定められたような場合には、買主が債務を引き受けたと推定すべきであり、それゆえ担保責任を問うこともできないとしています。しかし、通説のように限定をつける必要もないというぺきで、所有権を取得しようとしている人間が抵当権の実行をしたがって所有権の喪失を認めているなどと考えることは、少なくとも通常の人間にとっては意味をなさないことだからです。したがって特約がないかぎり、抵当不動産の取得者は抵当債務を引き受けたものとみるぺぎであり、三七七条は代値弁済なる仰々しい制度を認めたものではなく、このような抵当債務の当然の承継を認めた規定と読み替えられるべきことになります。

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第三取得者は特約がないかぎりは抵当債務を引き受けたものとみるべきだとしても、債権者との関係では、多少間題を残します。債務引受けは、一般には債権者の意思に反して行なうことはできないとされているからです。しかし、そこでいう債権者の意思は債権者の利益と読み替えることが可能で、たとえそうでないとしても、債権に抵当権がついている場合には、債権者が害される余地がないために、債権者の意思を間題とする必要がなく、そうでないとしても承諾が推定されるというのが通説といえます。また銀行取引の慣行では、抵当権を消して取引されるのが好まれ、三当事者の合意で、低当権者には売買代金から抵当債務を弁済して抵当権の消減、抹消を得、売主には残代金があればそれを弁済して所有権の移転登記がなされるというかたちで、事が一挙に処理されているようであるこれは抵当不動産の時価が抵当債務額を上回っている場合に利用される形式のようですが、下回っている場合でも利用できないわけのものではなく、その場合には、買主が細く金を出すことになります。いずれの場合でも、特別な問題は生ぜず、そもそも抵当不動産の売買と称する必要もないくらいです。
そこで抵当権について悪意で、しかも抵当債務の引受けをしない買主の場合が問題となってきます。しかし、このような悪意の買主は抵当権がそのようなものとして実行されるのを覚悟しているわけで、もとより、売主に対して必ず弁済すべき確約を求める場合もないではありません。しかし、それはその売主に対して責任を追及できるというだげのことであって、あえて担保責任なる規定を待つ必要はなく、第三者たる抵当権者に対する責任追求をなんら根拠づけるものとはなりません。要するに、担保責任はもとよりのこと、そのほかの三つの救済手段を申し立てるためにも、買主は善意でなければならないというべきです。
現在では登記制度が存在し、抵当権が占有をともなわない権利である以上、大部分のものが登記されることになり、事実もそうだといわれています。普通の人間はこのような制度を前提として多くの場合に登記所に行き、したがって多くの場合に抵当権の存在を知ることになります。それゆえ、現在の間題としては、以上四つの救済手没はほとんどその存在意義を失っているわけです。
登記にはいわゆる対抗力が与えられています。つまり登記されていない抵当権について善意の買主は、その登記さえすれば、対抗力によって抵当権を無視することができるために、もはやこれ以外に、以上の手段を必要としなくなったわけです。もっとも、抵当権の登記がされていても、これをみない者も有り得ます。そうして、このような買主をその善意のゆえに保護すべきだとすることも、絶対に不可能だということには必ずしもなりません。しかし、登記制度はもともと抵当権を保全するためにもあみだされたものであって、現在では登記を前提とするかぎり、登記をみない者はたとえ善意であったとしても、それは自らが行なわなかったことの結果であるために、その結果を他人に押しつけることはでぎないというほかはありません。これは対抗要件の理論からすれば、当然のこととされてきた点でした。そうして、これを一般化すれば、登記はその内容につき第三者の悪意を擬制する効力があるということができるわけです。

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